反脆弱性 上
#book
https://m.media-amazon.com/images/I/51TZkC2RlFL.jpg https://www.amazon.co.jp/dp/4478023212?tag=1000ch-22
反脆いものはランダム性や不確実性を好む。つまり、この点が重要なのだが、反脆いものはある種の間違いさえも歓迎するのだ。
反脆さがあれば、人は考えるより行動するほうがずっと得意になる。ずば抜けて頭はよいけれど脆い人間と、バカだけれど反脆い人間、どちらになりたいかと訊かれたら、私はいつだって後者を選ぶ。
一定のストレスや変動性を好むものは、身の回りにいくらでも見つかる。経済システム、人間の身体や精神、それから栄養だってそうだ
ランダムな事象(や一定の衝撃)によるダウンサイド(潜在的損失)よりもアップサイド(潜在的利得)のほうが大きいものは反脆い。その逆のものは脆い。
トップダウン的なもののほとんどが脆さを生み出し、反脆さや成長を妨げているとすれば、ボトムアップ的なものはみな、適度なストレスや無秩序のもとで成長する。発見、イノベーション、技術的進歩のプロセス自体を担っているのは、学校教育ではなく、反脆いいじくり回しや積極的なリスク・テイクなのだ。
人工的な複雑系では、暴走的な連鎖反応が起きることが多い。その結果、予測は難しく(時には不可能に)なり、思ってもみなかった規模の出来事が起こる。そのため、現代社会では、技術的知識はどんどん増えているのに、逆説的にも物事は今までよりずっと予測不能になっている。人工物が増え、昔のやり方や自然界のモデルが軽視され、あらゆる設計が複雑化して頑健さが失われている現代、ブラック・スワンの役割は高まりつつある。しかも、私たちは本書で「最新性愛症」と呼んでいる新しい病に冒されている。そのおかげで、私たちはブラック・スワンに対して脆弱な「進歩」という名のシステムを築いている。
リスク同士の比較は(今のところ)当てにならないとしても、脆さを見分け、観察し、たいていは測定することができる。少なくとも相対的な脆さなら、わずかな誤差の範囲内で測ることができるのだ。ある稀少な事象や災害が、別の事象よりも起こりやすいと信頼性を持って述べることはできないが(思いこむのが好きだというなら話は別だが)、ある事象が起きた場合に、こっちのモノや構造のほうがあっちよりも脆い、と断言するのはずっと簡単だ。
無秩序の親戚(仲間)とは、次のとおり。①不確実性、②変化、③不十分で不完全な知識、④偶然、⑤渾沌、⑥変動性、⑦無秩序、⑧エントロピー、⑨時、⑩未知のもの、⑪ランダム性、⑫混乱、⑬ストレス、⑭間違い、⑮結果のばらつき、⑯似非知識。
incetro
(a)ブラック・スワンが社会や歴史を支配していること(そして、後付けの合理化により、人間がブラック・スワンを理解できると思いこんでいること)。 (b)したがって、特に非線形性が激しいところでは、何が起こるかなんてわかったものじゃないこと。
学者(特に社会科学の学者)は、互いを信頼していないようだ。彼らはちっぽけなこだわり、妬み、氷のように冷たい憎悪の中で生きている。ちょっとした冷遇が積年の恨みへと変わり、コンピューター画面との孤独な対話や環境の不変性のおかげで、次第に化石化していく。あれほどの妬みは、ビジネスの世界ではほとんど見たことがない。私の経験からいえば、お金や取引というのは関係を浄化する。だが、「名声」や「評価」といった概念や抽象的な物事は、関係を歪め、永遠の敵対感を生み出す。次第に、私は名声を渇望する人たちに、吐き気、嫌悪、不信を覚えるようになっていった。
イノベーションを起こすには? まず、自分からトラブルに足を突っこむことだ。といっても、致命的ではない程度の深刻なトラブルに。私は、イノベーションや洗練というものは、最初は必要に迫られて生まれると思っている。いや、そう確信している。最初の発明や何かを作ろうという努力が思ってもみない副作用をもたらし、必要を満たす以上の大きなイノベーションや洗練へとつながっていく。
ストレスややりがいが欠如し、補償不足になっている状態、いわば〝逆ホルミシス〟の状態は、どんなに優れた者でも堕落させる。
誰でも若いころに気づくように、本や思想は反脆く、批判を糧にする。ローマ皇帝のマルクス・アウレリウス(ストア哲学を実践する作家のひとり)の言葉を借りれば、「火は障害物を糧とする」のだ。
私の曾祖父のニコラス・ゴーンは頭の切れる政治家で、数々の敵がいたにもかかわらず(最大の敵はタレブ家の曾々祖父だった)、権力の座と政治的な地位を最後まで維持した。曾祖父の長男、つまり私の祖父が、行政の職に就き、あわよくば政治家になろうとしていたころ、曾祖父が彼を病床に呼んだ。「息子よ、お前にはがっかりだ」と曾祖父は言った。「お前の悪い噂がいっさい聞こえてこない。嫉妬されないのは無能の証だ」
人体の反脆さには条件がある。それにはストレスの頻度が少し関係している。人間は慢性的なストレスよりも急激なストレスのほうがうまく対処できる。特に、急激なストレスのあとに十分な回復時間を取れば、ストレスがメッセンジャーの働きをしやすくなる。
ヒポクラテスの誓い